どうなる介護保険
昨日のニュースで興味深いものが配信されました。
私も在宅医療を行っているため、人ごとではありません。
かなり長いものですが、興味のある方は読んで下さい。
『介護保険改正議論が本格化…注目新サービス、財源は
2010年8月1日 提供:読売新聞
24時間巡回訪問 高齢者賃貸住宅
介護保険制度の2012年改正に向けた議論が本格的に始まった。
在宅生活を続けるための新サービスの導入や、制度維持のための財源確保が柱となる見通しだ。厚生労働省は11月にも改革案をまとめ、介護保険法の改正案を来年の通常国会に提出することを目指すが、財源手当てが不透明な中、高齢期の安心がどこまで確保されるのか、課題は多い。(社会保障部 小山孝、野口博文、飯田祐子)
危機感
「認知症になっても一人暮らしでも、自宅で安心して暮らせる制度にしてほしい」。先月30日に開かれた厚労省の審議会で、委員の一人はそう注文した。
大きな制度改正は、介護予防の導入で給付抑制を目指した06年以来。背景には、団塊世代の高齢化で要介護者の急増が見込まれる中、今のままでは制度を維持できない、との危機感がある。
介護保険が始まった2000年に149万人だった利用者は、昨年12月には2・7倍の399万人に増加。在宅介護の現場では、老老介護が増え、介護疲れから心中事件が相次いでいる。施設介護も、特別養護老人ホームの入居待機者が42万人を超え、やむなく無届けホームに入居する高齢者もいるのが実態だ。
こうした現状を受け、厚労省は先月26日、次期改正の論点を審議会に示した。「在宅サービスの充実」「高齢者住宅の供給」「認知症支援」「家族介護者支援」「給付と負担のバランス」など、制度全体を見直す方針だ。
すぐに駆けつけ
改正の目玉とされるのが、住み慣れた地域で暮らし続けるための体制づくり。中でも注目されているのが、24時間地域巡回型訪問サービスの導入だ。
現在は、主にヘルパーが日中の決まった時間に1時間ほど滞在するのに対し、新サービスでは、夜間も含め1日に3、4回、15分程度訪問する。呼び出しにも駆けつけ、きめ細かな対応を行う。既に一部の自治体などが独自に導入している。
東京都世田谷区は昨年、介護大手「ジャパンケアサービス」(東京)と共同で、高齢者の要請に応じてヘルパーを派遣する24時間随時訪問サービスを始めた。「廊下で転倒した」「おむつを替えてほしい」といった要請をオペレーターが受け、ヘルパーが30分以内で駆けつける。現在、約360人が登録している。
要介護5で認知症の母親(84)と暮らす女性(51)は、介護疲れや体調が悪い時に排せつや着替えの介助を依頼している。「おかげで在宅介護を続ける気持ちになれます」と話す。同省ではこうしたサービスに加え、在宅医療や訪問看護、介護者支援策も強化し、在宅介護を充実させたい考えだ。
生活支援付き
特養待機者が多く、施設整備に費用もかかる中、施設のほかに安心して暮らせる住まいを増やすことも課題だ。注目されるのが、高齢者を対象にした高齢者専用賃貸住宅。多くが段差などがないバリアフリー(障壁なし)で、見守りなどの生活支援が付く。介護事業所が併設されている物件も増えている。
埼玉県久喜市の「ハーウィル栗橋」(20戸)は、館内に大画面テレビを備えたロビーやレストランがあり、訪問介護事業所も併設されている。24時間の緊急通報システムのほか、ゴミ出しや買い物の送迎、定期健診などのサービスを追加料金なしで受けられる。費用は夫婦で最高月18万円。要介護3の夫(77)と暮らす女性(77)は、「バリアフリーなので自宅よりも介護が楽。施設と違って夫婦で住めるのもありがたい」と言う。
日本はこうした高齢者住宅が少なく、国土交通省でも建設費の補助を始めている。生活支援が付いた高齢者専用賃貸住宅で医療や介護をどう提供するのか、介護保険制度にどう位置付けるのかといった点が議論される見通しだ。
介護保険制度 2000年に導入。市町村で要介護認定を受けた人が介護サービスを利用した場合、費用の1割は自分で負担し、残り9割は保険財政で賄う。受けられる介護サービスの量は7段階ある要介護度で異なる。財源は、40-64歳の保険料が3割、65歳以上の保険料が2割、公費(税)が5割。
公費負担引き上げ困難
新サービスの検討が進む一方、高齢化が進んでも制度を維持できるような財政面での改革も迫られている。介護保険の総費用は、この10年間で2・2倍の7・9兆円に増え、25年度には19兆-23兆円に膨らむ見通しだ。
「来年、介護保険法の改正を予定している。財源をどう確保するのか、(12年度に)月額5000円を超えると言われる保険料をどうするのか」。先月29日に開かれた厚労省の審議会。同省の山井和則政務官が制度改正の難しさを率直に語った。
現在、65歳以上が支払う保険料は、当初の1・4倍の月4160円(全国平均)。保険料5000円という水準は「負担の限界を超える」と懸念する市町村は多い。審議会委員の間からも、「保険料引き上げだけで対処するのはもう限界。公費の拡充を検討すべきだ」「公費負担割合を現行の5割から6割に引き上げるべきだ」などの意見が出されている。
ただし、公費負担割合を6割にするには、現在でも7000億円程度の財源が新たに必要になる。社会保障財源として期待される消費税の増税議論は、参院選後、封印されつつあり、公費割合の引き上げは難しいのが現実だ。
保険料上昇を抑制するために、保険給付の対象者を要介護度が重い人に限定することや、現在は40歳以上の保険料負担者の年齢を20歳などに引き下げることも、今後の検討課題といえる。
人材確保も課題
介護人材の確保も大きな論点だ。介護職員の賃金水準は全産業と比べて低く、離職率が高い傾向にある。一方、介護ニーズは今後も高まり、約124万人(07年)いる介護職員は、15年後には212万-255万人が必要と推計されている。
「財政」と「人材確保」という介護を支える基盤がしっかりしていなければ、新サービスの実現も絵に描いた餅になりかねない。』
さて、私たちの老後はどうなるのでしょうか?それはさておき、その場しのぎではなく、”本当に”住み慣れた町で過ごせるような制度を作って欲しいものです。